文理選択・理科の選択科目について

 個人的には、この大きな決定を高1生の段階で決めさせるのは酷な気がします。高校1年生にして将来に大きな影響を与える文理選択を強いられることに釈然としないものがありますが、選択しないわけにはいかないので、多少なりともご参考になればと記述させて頂きます。

 文理選択について

 まず、高1生のときの数学の得意・不得意で文系理系を決める方が多いですが、それは避けた方がよいように思います。高1生の時の数学つまり「数学ⅠA」が得意だからといって「数学ⅡB」や「数学ⅢC」が得意になるとは言えないからです。
 「数学ⅠA」は中学生の数学に内容が近く、中学のときに数学が得意な生徒は「数学ⅠA」で高得点を取れる可能性が高いですが、「数学ⅡB」以降は本格的に高校数学が始まりますのでしっかり勉強していかないとわからなくなってしまうからです。
 困ったことに、多くの高校で文理選択をした後に「数学ⅡB」が始まるので、「数学ⅡB」の難しさをわからないまま文理選択をしないといけません。

 逆に、中学の時に数学が得意でなくても高校に入ってしっかり勉強を続けていけば、「数学ⅠA」のときは成長が感じられなくても「数学ⅡB」以降で飛躍的に伸びる方も少なくありません。過去に学校の先生に「数学が苦手だから理系に行かない方がいい」と言われた生徒も高2生から飛躍的に伸びて入試本番でも数学が一番得意となったというのは少なくない話です。もっとも、かなりの勉強量をこなしていたことは言うまでもないことですが。 

  要するに、高1生の段階の数学が得意・不得意というのはあまり大きな要因ではなく、しっかり学んでいこうという熱意と知的好奇心・興味関心の方が何倍も大切だということです。大切なのは、熱意と知的好奇心です。

 それと大切なことですが、文理選択や選択科目は大学の学部を(ある程度)先に決めてから行うのが最も効率が良いです。大学は決めなくてよいので、(ある程度の)学部を決めてください。例えば、もしかしたら工学部を受ける可能性があるのに「物理」ではなく「生物」を選択してしまうと、多くの大学の工学部が受験できなくなります。
 大まかな学部も決めずに、得意・不得意や何となくで文理選択・選択科目を決めてしまうと後で大変なことになります。文理選択や選択科目は人生のターニングポイントであるため、5年後、10年後など先々の見通しを考えた上で決めていきましょう。

文理選択まとめ

・高1生のときに数学が得意でも高2生以降は内容が難しいのでさぼるとすぐにわからなくなる。

・高1生のときの数学の得意・不得意で文理選択をするのは避けた方がよい。

・現段階の得意・不得意よりも、熱意と知的好奇心を持ち学び続ける姿勢が最も大切。

・文理選択や選択科目で将来受験できる学部・学科が決まってしまうので、ある程度学部・学科を決めておく必要がある。

・文理選択や選択科目は人生のターニングポイント。

 理科の選択科目について

 おそらく一番勘違いされている科目が「生物」かと思います。生物は暗記のみの科目ではありません。学校の定期試験では穴埋めなど語句の暗記が多いと思いますが、共通テストでは語句の暗記問題はほぼ出題されません。定期試験で高得点が取れても共通テストでは平均点も行かないというのは大袈裟な表現ではありません。下に2022年度共通テストの生物の第2問の一部を掲載します。

 このような感じで、共通テストでは「読み取り・考察問題」が大部分を占めます。語句の暗記問題はほぼありません。生物は物理に比べて日本語の文字数が多いので、物理に比べて読み取り能力・読解力が必要になります。また、2次試験では記述式の問題が出題されるため、生物は「国語的要素」が強いとも言えます。逆に、物理は「数学的要素」が強い、といいますかほぼ数学です。生物では化学の知識が前提になる単元もあるので、「化学が苦手」という方は注意が必要です。

 最後に、理科の選択が「物理」にしろ「生物」にしろ、学校の授業が入試直前に終わるため(無理やり終える?)、現役で合格を目指すならば学校の授業よりも先に学習を進めておく必要があります。特に学校で高2生から始まる科目は尚更です。これは学校の個々の先生の問題ではなくシステムの問題です。学校の先生がどんなに素晴らしい先生でもシステムの枠を超えて指導することは許されません。例えば、生徒が余裕を持って受験に臨めるようにと、本来高2生で習うように決められている内容を高1生に教えることはできません。
 ある先生がどんなに優秀でも他の先生と足並みを揃えて、担当する先生によって差が生じないようにすることは公立高校など公的機関では必要なことです。そのため、端的に申し上げますと高松市の公立高校のシステムでは理系の学部に現役で合格することが極めて難しいものとなっています。
 この事実にいかに早く気付くかです。早く気付いて理科の対策を早めに始めた人が現役で合格できます。学校の先生もこの事実に気付いていると思うのですが、はっきりと生徒に告知することは少ないと思います。はっきりと生徒に「学校の授業では受験直前に終わるので、よほど優秀な人でなければしっかりとした受験対策ができない。現役で合格することを目標にしている人は自分で早めに進めておいてください」と告知することが必要ではないでしょうか?
 高1生のときからこの事実を伝えることによって浪人してしまう人は激減するはずです。高1生のときから受験(数年後の自分)を意識させることはとても大切なことですので、「学校よりも先に学習を進めておく必要性」を伝えることはメリットしかないように思います。また、この事実を告知しなければ、結局塾で先に学習を終えている生徒が有利になり、塾に通わず学校を信じて学校に頼って学習をしている生徒が不利になってしまいます。公立の学校がより貧富の差を助長することは決して許されるものではないように思います。自分の都合ではなく、生徒のために何が良いのか考えて行動して欲しいと切に願います。

理科の選択まとめ

・生物は「国語的要素」、物理は「数学的要素」が強い。

・生物をただの暗記科目だと思っていると痛い目を見る。

・どれを選択しても学校の授業は入試直前に終わるので、自分でどんどん進めていくことが必要。