高校3年間で志望校に合格するには
大学入試は高校入試とは違い全国の高校生、さらには浪人生との競争になります。難関大学や医学部に合格しようと思うと並大抵の努力では達成できません。
高松市で一番の進学校と言われている高松高校から「東大・京大・阪大・医学部」などに「現役」で合格する生徒は60名ほどかと思います。これは2割程度の人数です。にもかかわらず、高1生のときに「みんなが合格する」と思っている方がいるのは不思議なところです。情報が正しく伝わっていないように思います。
経済用語に「パレートの法則」というものがあります。これは上位の 20 %が全体の 80 %の結果を生み出しているというものです。経済格差の問題においては、世界の上位 10 %の富裕層が約 80 %の富を所有しているとの話ですのでもっと極端な割合ですが。このパレートの法則が学力格差にも当てはまっていないか、よく考えなければならないかと思います。
実際に、高松高校から「岡山大学」や「広島大学」に合格するには、少なくとも上位50%に入っておく必要があります。同様に、高松一高から「香川大学」に合格するには、少なくとも上位50%にいなければなりません。そのため、高松高校から「岡山大学」や「広島大学」に合格したり、高松一高から「香川大学」に合格するにはかなりの努力が必要になります。むしろそれらの大学に合格できる学力が達していない人が大半です。
高1生のときは「旧帝大などに多くの人が合格する」と思っている方が少なくないかもしれませんが、高3生になると多くの方がその考えが間違っていたことに気付きます。高松市の進学校で「高1生のときは香川大学などは誰でも合格できると思っていたけれど、高3生になると香川大学に合格できる人はそれほど多くなかった」と毎年のように話されていると聞きます。
高校3年生が3年間で「大学入試はみんなが思っているほど甘くない。高1生から受験勉強を始めても間に合わないかもしれない」という事実に気付いたとしても、それが高1生に共有されることはなく、高1生は「まだ受験は先の話」と思い込み、日々の生活に追われ、気が付けば高3生です。これを毎年毎年繰り返すわけです。なぜ高3生が気づいた事実が高1生に共有されないのでしょうか?それが不思議でなりません。
事実が正確に伝わっていないことが、入試対策を先延ばしにしてしまい、3年間で思ったほどの学力が身につかない一番の要因かと思います。
以前、高松高校の生徒から「高高生でも国立大学は話にならない生徒は少なくないし、徳島文理大など地方の私立に合格できない生徒もいる。入学後に差がつくので1年生のときからしっかり勉強してください」と生徒に熱心に伝えていた先生の話を聞きました。
生徒のためを思ってしっかりと事実を伝えている先生もいらっしゃるので、学校の指導が悪いわけではなく、都合の悪い情報を伏せ、耳あたりの良い情報だけを伝えてしまっている塾・予備校の問題もあるのかもしれません。極論を言いますと、生徒に難しい大学を目指させて、現役で合格できず、浪人してもらった方が塾や予備校などは収益を増やすことができます。浪人して合格できるのは一部の人ですが、一部の人を大々的に取り上げて「浪人すれば合格できる」と宣伝すれば、次年度も収益を増やすことができます。実際にそのような意図をもっているかどうかではなく、浪人させた方が得になってしまうシステムが問題かと思います。全員を現役で合格させようというインセンティブが働きにくいことが、塾や予備校が抱える問題かもしれません。
また、学生の志望大学がやたら画一化しているのも気になります。単純に国公立大だけでもかなりの数があるのに、ほとんどの学生が同じような大学を志望しています。生徒個人個人で学びたい分野が違い、特に理系学部は大学ごとで強い分野が違うため、ほとんどの生徒が同じ大学を志望することは異常な事態かと思います。
生徒の志望大学が同じ方が指導は容易です。ほとんどの生徒の志望が3つくらいの大学に集まった方が、3つの大学に向けた指導をすればよいので、負担はかなり少なくなります。多くの塾や予備校などで「〇〇大対策」「〇〇大志望者対象」など具体的な大学名が挙げられてしまうと、それ以外の大学への関心が自然と薄れてしまうように思います。
理系学部に進学する場合は、大学でどのような研究室でどのような研究をしたかがとても大切になります。自分が学びたい研究内容が強い大学に進学していないと、偏差値の高い大学に入ったものの、その大学では自分のやりたい研究が満足にできず、思ったような職に就けなかったというのは理系あるあるです。そのため、理系の場合は、大学名だけではなく、研究の専門性も考えておかなければなりません。
以上のことから、現役で志望校に確実に合格するには、1つ目は大学入試は高校入試とは比べ物にならないほど難しく、ほとんどの人が志望校には合格できないことを認識すること。2つ目は、状況に流されるのではなく、高校卒業後どうしていたいかを真剣に考え、目標に向けて早め早めに動くように心がけることかと思います。特に理系の場合は、大学だけではなく、自分のやりたい研究もある程度考えておく必要があります。この2つを意識するだけで3年間で大きな差になるはずです。1人でも多くの方が大学受験を終えたときに後悔しないで済むことを願って止みません。